意識は無意識から作られるか

北海道札幌市で脳梗塞・脳出血の脳卒中を専門に自費リハビリをさせていただいております「脳とカラダの研究所」の藤橋亮介です。

本日は少し難しい内容になるかもしれませんが、とても興味深く大切な考え方だと思いますので、余裕のある方はぜひ読んでお付き合いいただけると嬉しいです。

私たちの体の意識

私たちの体は、私たちの意思で体を動かしているという意識があります。

手を挙げるという動作も、立ち上がるという動作も、歩行も、自分がその運動をしようとしてしているという意識があります。

これは「運動主体感」といって、自分の体は自分が動かしていると普段から思っているからこそ、ほとんど無意識で体が動かせるわけです。

脳卒中になって運動麻痺になったり、痛みがある場合に、思った通りに力が入らなかったり動かなかったりすると、運動主体感が低下していきます。

そのため、違和感や嫌悪感を感じることになります。

ひどい時には、誰かに動かされているような感じや、自分の体自体が自分のものでなく、他人のものに感じてしまうような高次脳機能障害が現れることもあります。(ややこしいですが、これは「身体所有感」の低下)

例えば、手を挙げようとする場合

①手を上げようと考える(意識)

②脳から手を上げるための命令が出て、筋肉が動く

③実際に手が上がる

というような順番で体は動いていると考えられています。

無意識が意識を決定する?

しかし、実は私たちの意識するよりも無意識の方が、0.3 ~ 0.5秒ほど速いといわれています。

実際には、①手を挙げようとする意識は、②の筋肉が動くよりも、0.35秒遅かったということが証明されているようです。(かなり古い文献なので、最近のリサーチはできておりませんが…)

つまり、②→①→③という順番となり、体が先に動いて、意識が後付けのようになっているということになります。

このような話は「受動知覚仮説」のなかで説明されます。

認知的不協和

同じように心理学でも、「認知的不協和の解消理論」というものがあります。

自分が何かしらの行動や発言などをした場合に、本当はしたくなかったことや嫌なことだったとしても、それを本当はやりたかったとか、好きだったと思い込んでしまうことがあります。

脳は、違和感を感じることが嫌なので、そのような意思に反することが起こってしまった場合には、後付けのようにして、良いように解釈してしまう心理的な作用があります。

スポーツの世界でも

スポーツの世界でも、

何かすごいことが起きたときには、その運動が起こる前から、できるイメージが作られているということもあります。

つまり、運動の前に、すでにできるイメージがないとものごとは上手くいかないというように考えることができます。

半側空間無視でも

脳卒中の右半球損傷で、左半側空間無視の症状が強い方に、左半分が燃えている家と、燃えていない普通の家(燃えている家と同じ家)を見せてどちらに住みたいか尋ねると、

本来であれば、左半分は見えていない(認識できない)はずなので、どちらかを選ぶのは50%,50%になるはずですが、燃えていない家を選ぶ方の方が圧倒的に多いようです。

なぜ、そちらを選んだか尋ねると、同じ構造の家なのですが「屋根がかっこいい」「こちらの方が広い」などと、なんとなく理由をつけることがあるようです。

これは、実は左半側空間無視の方も無意識のなかでは、左半分は見えているけれど、意識の中では見えないようにしているので、適当な言い訳をしているというように解釈できます。(実際に半側空間無視の方は視野の欠損などはみられない)

リハビリにどう応用できるか

これらのようなことから、実は、自分の行動は無意識の自分が行動していることであり、意識は無意識の自分の行動に対して正当化した理由をつけているだけということが考えられます。

このことをリハビリで活かしていくためには、何かを意識したことことをもう少しお互いに考えていきたいと思っています。

意識されるというのは、感じたことや、それに対する気持ちの部分です。

何かの行動に対してもいいですし、どこかが痛いということでもいいですし、

何かしら感じる意識に対して、まずその意識がどのようなところからそう感じるのか?

無意識になっている部分はどこなのかを、一緒に探したり、確認するということは、リハビリにおいても、人生においても重要だと思います。

どうでもいいと思うことに重大なヒントが隠されていることがとても多いですので、そんな些細なことも共有しつつ、お客様と関係を築いていけるように努力していきたいですね。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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