脳にある、いる・いらないフィルター
時間の経過とともに、情報がどんどん流れていってしまいます。
その情報をうまくキャッチすることが重要だと、前回のお話でさせていただいましたが、そのメカニズムについてまた少しお話しさせていただきます。
そのメカニズムの中枢が『網様体賦活系』といわれる脳の部位で行われているといわれます。
医療従事者にとってこの部位は、主に覚醒を司る部位だと認識されていて、たとえば、脳卒中の後に覚醒レベルが低い(意識が朦朧としている、意識がはっきりしていない)方に、起立台もしくはティルトテーブルといわれる、体や手足を固定して徐々に角度を高くして、ゆっくりと患者様を起こしていく道具を使って、寝ている状態から立っている状態へもっていく方法があります。そうすることによって、網様体賦活系が促通されて、覚醒状態が上がるとされています。
実際には、私が働き始めた10年ほど前には、早期離床がものすごく流行った時代だったのでおこなったことがありますが、最近では滅多にみなくなりました。効果についてはイマイチなところなのでしょうか?
しかし、ここ数年、怪しげな自己啓発セミナーも増えてきたこともあって、「引き寄せの法則」なるものが流行したこともあって、再び『網様体賦活系』が脚光を浴びています。
「引き寄せの法則」自体は、本当かどうかは別にして悪いものだとも思いませんし、そのおかげで幸せを実感できる方もいらっしゃると思うので、肯定も否定もありませんが、この法則の中枢となるものが『網様体賦活系』だということなのです。
網様体賦活系は、脳幹の網様体という脳の下部にあり、全身の神経から脊髄を通ってやってきた刺激(電気信号)を大脳に伝えるためのフィルターとしての役割があるとされています。
身体中・全身には、感覚を感じるセンサーがあり、生きている間、常に刺激が入り続けます。その刺激は同じように常に脊髄を通って脳に伝えられますが、脳はそのような膨大な情報を、脳に入る入り口の部分で必要な情報を選択しているということです。
機能解離(以前のブログをご参照ください)と同じように、脳も莫大な情報を処理するのに、パンクしないように必要な刺激だけを選別しているということです。
つまり、脳が必要だと感じているものしか、脳に情報は入っていないということになります!
だからこそ、重要なものを理解するということが必要になります。
脳が重要だと思っていないことに関しては、刺激が入っていても脳は受容していないことが多いです。
リハビリ現場でも、
マッサージでも、関節の可動域訓練でも、たかが触れるということにも、脳のためのリハビリがおこなえるチャンスがあります。
今どこに触れているかわかりますか?どんなふうに動いているかわかりますか?なんのために役立つかわかりますか?など、聞いてみることで、脳が重要だと思うフィルターが開かれる可能性があります。

https://bsd.neuroinf.jp/wiki/ファイル:Reticular_formation.jpg