他人の目を気にして姿勢を無理に正す?
整形外科の脊柱管狭窄症と病名を聞いたことはありますか?「あるある」ではありますが、「他人から姿勢が悪いと思われたくない」という理由だけで、無理に背中を伸ばそうとしている円背のご高齢女性。
実はこの「見た目のための努力」が、脊柱管狭窄症の悪化を招いてしまいます。
円背を無理に伸ばすことで起きるリスク
脊柱には人それぞれ色々な形ですが、脊柱が全体的に丸くなる、いわゆる「円背」。
その状態で、他人の目を気にして無理やり背筋を伸ばそうとし、結果として脊柱管が狭まり、間欠性跛行や痛みが強くなっていたのです。
本来であれば、少し背中を丸くしたままの方が楽に動けるのに、**“見た目のために苦しい姿勢を選び続ける”**という矛盾。
では、なぜこんなことが起きるのでしょうか?
背景にある心理・社会的要因
このようなケースでは、姿勢の問題以上に、「どう生きてきたか」「どんな価値観を持っているか」が大きく影響します。
🔹 他人からどう見られるかを気にする文化的背景
戦後から高度成長期に育った世代は、「姿勢を良くしなさい」「人前ではしゃんとしなさい」と言われて育ってきた方が多く、
「背中が曲がる=老い・だらしなさ・恥」といった印象を強く持っていることがあります。
🔹 自己肯定感や加齢の受け入れ
「老いた自分を認めたくない」「昔のように見られたい」という思いから、姿勢へのこだわりが強くなることも。
🔹 家族や周囲のプレッシャー
「もっと背筋を伸ばしなさい」「姿勢が悪いと老けて見えるよ」など、善意のつもりの言葉が逆効果になることもあります。
構造的に改善できる可能性はある?
「脊柱の変形はもう戻らないのでは?」という疑問に対して、答えは**「部分的には改善できるが、限界がある」**です。
✅ 改善できる可能性のある部分
- 胸椎や骨盤の可動性が残っている場合
- 筋緊張のアンバランスや筋膜の癒着による機能的な円背
→ このようなケースでは、構造的な改善=姿勢の変化も見込めます。
❌ 改善が難しい部分
- 椎体の変形
- 靭帯や関節包の長期的な拘縮
→ こうした骨そのものの変形は、手術をしない限り戻りません。
これは膝の変形性関節症と同じ?
実はよく似ています。
変形性膝関節症も、どれだけ筋トレや運動をしても、変形そのものは元に戻りません。
ですが、周囲の筋肉を鍛えたり、関節の使い方を変えることで、「痛みを減らす」「歩ける距離を伸ばす」などの機能的改善は十分可能です。
つまり:
“変形を治す”のではなく、“変形があっても快適に生きる”ことがリハビリの本質。
これは、脊柱でも膝でも共通です。
どう関わるべきか?セラピストとしての姿勢
私たちがすべきことは、「背中をまっすぐにしなさい」ではなく、「痛みなく動ける姿勢を一緒に探しましょう」と寄り添うことです。
- 変形を受け入れながら、できる範囲で姿勢や動作を最適化する
- 見た目よりも、「自分らしく動ける体」を一緒に作ること
- 「少し背中が丸くても、元気に生きている人がたくさんいる」ことを伝える
このような姿勢で向き合うことで、患者さんの意識も少しずつ変わっていくのではないでしょうか。
では、脳卒中の患者様はどうなのでしょうか???
また次回!
筆者プロフィール

理学療法士 脳とカラダの研究所 代表
藤橋 亮介(ふじはし りょうすけ)
〜経歴〜
2011年 理学療法士 国家資格取得
札幌市 脳神経外科病院に勤務
2014年 大阪府 認知神経リハビリテーションセンターに勤務
2015年 奈良県 ニューロリハビリテーションセンター
健康科学研究科(大学院)に入学
2017年 修士 取得
2019年 札幌市に戻る
児童発達支援・放課後デイサービス 事業所に勤務
2020年 独立し、「脳とカラダの研究所」 を開業

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