なぜ体が鉛のように重い?脳卒中と重量感覚の関係
今日は体の重さについてのお話です。これに関してもここ数日ずっと話しをしている「予測」がキーワードになります!
何気なく私たちの生活で、物の重さを感じたり、自分の体の重さを意識したりすることがあります。この「重さ」の感覚は、実は非常に複雑なメカニズムによって生み出されています。今回はこの重量感覚のメカニズムと、脳卒中後に体が重く感じられる現象について考えていきましょう。
重量感覚のメカニズム
触った感覚や温度の感覚などは、それを感じる感覚の細胞があるのですが、実は重量を感じる細胞というものはありません!重量感覚は、単に物理的な重さを感じ取るだけではありません。実際には、以下のような要素が複雑に絡み合っています。
- 予測:脳は物体を持ち上げる前に、その重さを予測します。この予測は視覚情報や過去の経験に基づいています。
- 感覚入力:物体を実際に持ち上げると、筋紡錘、ゴルジ腱器官、関節受容器などから感覚情報が入力されます。
- 比較:脳は予測した重さと実際の感覚入力を比較します。
- 予測誤差:予測と実際の入力の差が誤差信号として生成されます。
- 知覚の形成:この誤差信号が、私たちが感じる「重さ」の感覚に大きく寄与します。
- 更新:この経験に基づいて、脳は将来の予測を更新します。
脳卒中と重量感覚
脳卒中後の運動麻痺がある方々は、しばしば自分の体が異常に重く感じると訴えます。これは単なる気のせいではなく、いくつかの要因が関係していると思われます。
- 筋出力低下
- 感覚の鈍麻
- 身体イメージの変質
- 抗重力筋の活動低下
- 運動計画(プログラミング)の困難
- 注意の低下
- 疲労の増大
- 心理的要因
これらが要因となり、予測と実際の活動に誤差が生じることで、「体が重い」「おもりがついている」「鉛が張りついた」というような『錯覚』が起こってしまうんですね。
前回のブログの通り、『錯覚』は、『脳にとって都合の良い「最善の推測」』として捉えることができます。
あくまでも、脳はそのように解釈しているということです。
リハビリテーションの重要性
脳卒中後のリハビリテーションでは、この「重さ」の感覚を軽減させることも重要な目標の一つです。感覚運動統合の改善、筋力トレーニング、姿勢制御の練習などが行われますが、それぞれの患者さんの状態に応じた個別のアプローチが必要です。
重量感覚の改善は、単に体を軽く感じるだけでなく、日常生活動作の改善にもつながります。適切なリハビリテーションを通じて、脳は新しい「予測モデル」を構築し、徐々に体の動きと感覚のギャップを埋めていくことができるのです。
筆者プロフィール
理学療法士 脳とカラダの研究所 代表
藤橋 亮介(ふじはし りょうすけ)
〜経歴〜
2011年 理学療法士 国家資格取得
札幌市 (旧)宮の沢脳神経外科病院に勤務
2014年 摂南総合病院 認知神経リハビリテーションセンターに勤務
2015年 畿央大学 ニューロリハビリテーションセンター
健康科学研究科(大学院)に入学
2017年 修士 取得
2019年 児童発達支援・放課後デイサービス 事業所に勤務
2020年 「脳とカラダの研究所」を開業
脳卒中後遺症を専門に、あきらめない方のためにそれぞれの脳のクセにあったオーダーメイドの脳のリハビリを提供する自費リハビリをおこなっています。
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