自分の感覚はどれほど信頼できるのか?
みなさんは自分の体の動きや位置を正確に感じ取れていると思いますか?実は、私たちの脳は常に「最善の推測」をしているだけかもしれません。
昨日の「自由エネルギー原理」についての投稿に引き続き、私が大学院生時代に研究をしていた「腱振動刺激による運動錯覚」の研究からも関連づけて解釈ができます。
私たちの体の感覚は思ったよりもあいまいで、簡単に騙されてしまうんです。
腱振動刺激による運動錯覚とは
筋肉や腱を特定の周波数で振動させると、実際には動いていないにもかかわらず「動いた(筋肉が伸びた)」と感じる運動錯覚が起こります。
これは、筋肉の長さの感覚を司る「筋紡錘」という感覚器が、振動の刺激を受けることで私たちの意志に関係なく働いてしまうからです。
しかし、このような現象が起こることをすでに予測しているだけで錯覚は強くなり、何が起こるのか知らないと錯覚は弱くなったりもするかなり曖昧なものなのです。
また、コップや物に触れながら行うと、実際にはありえないのに、小さく縮んだりするような現実にはありえないことも感じられてしまうのです。
このことから、脳卒中で運動麻痺や感覚障害がおこると、筋紡錘が正常に作動しなく、私たちの体は正確な情報を感じられなくなりこのような錯覚を感じてしまうことがあります。
なぜこんな不思議なことが起こるの?
これらの現象を説明する理論として「自由エネルギー原理」で説明することができます。
- 脳は常に予測する:脳は今の状況を予測し、その予測と実際の感覚を比べています。
- エラーを最小限に:予測と実際の感覚の間のズレ(エラー)を最小限にしようと脳は頑張ります。
- 最もありそうな解釈を採用:脳は様々な情報を組み合わせて、最もありそうな解釈を選びます。
つまり、私たちの体の感覚は、脳にとって都合の良い「最善の推測」なのです!!
これがリハビリにどう関係する?
私たちの体の感覚は、単純に体からの信号を受け取っているだけではありません。脳が様々な情報を組み合わせて、最も妥当だと思われる解釈を作り上げているのです。
この仕組みを理解することで、自分の体や心との付き合い方が変わるかもしれません。
例えば、受け身になって体を揉んでもらったり、テレビを見ながら筋力トレーニングをしても、ひたすら歩いてみても
「しっかりと予測を立ててその予測に対する誤差が修正されないと適切な学習が促進されない」ことになります。
次に体の感覚に注目するとき、それが「絶対的な真実」ではなく、脳の解釈かもしれないと考えてみてください。そうすることで、自分の体と心についての新しい発見があるかもしれませんよ!