うまく動くための学習のメカニズム
リハビリをすることによって、体がよくなっていくメカニズムをご存知ですか?
なんとなく繰り返すだけでも、基本的には体は良くなっていくことも多いですが、
そもそも、人がどのようにして新しい運動を学習していくかを知ることによって、より良くなるかもしれませんよね。
北海道札幌市で脳梗塞・脳出血の脳卒中を専門に自費リハビリをさせていただいております「脳とカラダの研究所」の藤橋亮介です。
本日は、運動学習のメカニズムについて、かんたんに説明をしていきたいと思います。
このメカニズムがわかると、普段の練習も少しだけ変わってくるかもしれません。
コンパレーターモデル
ききなれない言葉かもしれませんが、難しくはありませんのでご安心ください。
新しく運動ができるようになったり、下手なものが上手になることを、「運動学習」といいます。
基本的に、リハビリでの身体面の回復はこの運動学習をいかに効率よく促せるかにかかっています。
その運動学習のメカニズムとして知られているのが、「コンパレーターモデル」です。
「コンパレーター」とは「比較」という意味です。
人間には比較することで、何かを学ぶシステムがあるということですね。
下のような図で説明することができます。
①運動の命令
何かをしようと思ったときに、運動の指令がされます。
その運動は、身体の筋肉に命令され、関節が動くことで、実行されます。
そして、動いた時の感覚や、触った時の感触が得られます。
②予測システム
①では実際の運動が行われるのに対して、②では脳の中で、予測が働いています。
つまり、脳の中でも実際に行われようとしている運動がイメージされています。
③比較・照合
①の実際の運動した時の感覚と、②の脳内でのイメージが、脳の中で比べられ(比較され)ます。
このときに、①と②が、同じだった場合、思った通りに運動が行われたことになります。
しかし、①と②が違った場合に、何が違ったのかが検出されて、その違った部分を修正していきます。
このシステムが運動学習となります。
意識されると気づきになります
実際には、どんなことをしていてもシステムは働いています。
歩いているときや、ご飯を食べているとき、お話をしているとき、どんなときでも、無意識にこの比較がされています。
普段のこのような行為が、うまくいっているとき(つまり、実際の運動と、予測が一致しているとき)は、意識されません。
しかし、うまくいっていないとき(実際の運動と、予測が一致しないとき)に、「あれ?」「なんか違う」「言い間違えた」「変な感じがする」となって、意識されます。
そこが学習のチャンスです!
具体的には、
例えば、通常はトイレに行きたい!と思って、トイレに向かっているときは、トイレに行くことが意識されているので、歩いていることは意識されません。
そして、足の裏からは常に床を踏んでいる感触が刺激となって脳に伝えられていますが、足の裏の感触は意識されませんよね。
これは、足の裏の感触がないというわけではありません。
コンパレーターモデルでいうと、
①の実際に歩く運動に伴っている足の裏の感触が、②の脳内でイメージされた感触と、一致しているために、わざわざ意識されていないということです。
しかし、床が濡れていて、踏んでしまったときには、急に足の裏に注意が向いて、足の裏に「冷たい」「ベタっ」とした違和感が感じられ意識されますよね。
つまり、脳の中では歩くことによって、常にフローリングの温度やサラッとした感触が、イメージとして予測されているのです。
それが、濡れた床を踏むことによって、予測されたイメージと違うことによって、間違ったことが起こったから確認してください!と脳が教えてくれているのですね。
ポイント
しかし、麻痺や代償運動が定着してしまっていると、そもそもこの予測やイメージが、間違っていたり、予測が働かなくなってしまっていたり、そもそも間違っている運動を予測してしまっていることがあります。
そうなると、意識されづらくなって、間違いが修正されないので、運動学習がすすみづらくなってしまっているのです。
そうなってしまっていると、またその部分の訓練が必要になる場合もありますが、まずは次のことを気をつけて訓練に取り入れてみてください。
❶違和感があったら、そこはよくなる可能性があるとチェックすること!
違和感があったり、重いというような嫌な感触があったら、そこは実際の運動と予測されたイメージがうまくいっていないということです
❷直したいポイントがあれば、ただ繰り返すのではなく、予測やイメージを意識的にしてみること
動かしたり触ったりする前に、こんな感触がするだろうな?や、こんなところが動く感じがするだろうな?などと考えてみてから、運動をしてみてください。
❸いい方の身体の動きと比較してみる
いい方の体では、こんな感触がしているから、麻痺側でもこんな感触を感じられるはずだ!とイメージして、いい方の体をお手本にしてみてください。
そうすると、動き方の違いや、動いた時の感触の違いなどに気づくことができるかもしれません。
それに気づくことが、運動学習の第一歩となるはずです。
何か気づいたことがあったり、違いに気づけないと思ったら、ぜひ教えてくださいね!!
それでは、最後までご覧いただきありがとうございました!
筆者プロフィール
理学療法士 脳とカラダの研究所 代表
藤橋 亮介(ふじはし りょうすけ)
〜経歴〜
2011年 理学療法士 国家資格取得
札幌市の脳神経外科病院に勤務
2014年 大阪府 認知神経リハビリテーションセンターに勤務
2015年 奈良県 ニューロリハビリテーションセンター
健康科学研究科(大学院)に入学
2017年 修士 取得
2019年 札幌市に戻る
こども発達研究センターに勤務
2020年 独立し、「脳とカラダの研究所」 を開業
札幌市で、脳卒中後遺症を専門に、あきらめない方のためにそれぞれの脳のクセにあったオーダーメイドの脳のリハビリを提供する自費リハビリをおこなっている。
少しでも伝わりやすいように動画でわかるYouTube チャンネルもはじめました。
是非ご覧ください。