原始的な運動パターンと運動単位の動員異常
北海道札幌市で脳梗塞・脳出血の脳卒中を専門に自費リハビリをさせていただいております「脳とカラダの研究所」の藤橋亮介です。
本日は、残りの痙性麻痺の症状についてまとめてお話しさせていただきます。
③原始的な運動パターン
④運動単位の動員異常
についてです。
まだ、痙性麻痺の症状についてわからない方は、初めにこちらを読んでみてくださいね。
原始的な運動パターン
ここまでくると、ある程度は自分の体が動くといううような状態となっています。
難しい動きはできないけれど、手や足を曲げたり伸ばしたり、なんとか力を入れることができる状態です。
そのため、慣れてくれば、装具をつけての歩行や、家での生活も自立できる方が多いです。
しかし、分離運動は苦手なままで、力の入り過ぎや、思い通り動いているとは言えない状態です。
「共同運動」とよばれるもので、神経はある程度、曲げるや伸ばすなど大まかな動きを命令する機能が備わっているので、脳からの命令がある程度つたわると、簡単な動きはできるようになります。
ただし、そこから「分離運動」となると、その神経に対して、もう働かなくていいよという「抑制」の神経や、その抑制の神経を抑制する「抑制の抑制=促進」というような複雑にコントロールされていく必要があります。
運動単位の動員異常
筋力と同じような意味ですが、少し違います。
もう少しだけ詳しくいうと、筋出力というような言葉や、力の調整するための能力というような意味です。
筋力については以前のブログで説明しておりますので、参考にしてみてください。
原始的な運動パターンは、どのような行為や動作においても一定の同じ動きしかできないことに比べて、
運動単位の動員異常では、簡単な分離運動はできるが、細かい動作や力の入れ具合が足りないとういうような力のコントロールがうまく調整できない状態のことをさします。
厄介な問題
ここまでのレベルになると、入院中では車椅子で病棟のADLが自立したり、介助下での歩行での移動などができてくることが多いです。
つまり、日常的に身体を動かしているけれど、動き方が間違っていたり、うまくいっていない場合が多いです。
そのため、体の使いやすい部分だけつかって動き過ぎてしまい、使いづらい部分はつかわないというような状態が定着してしまっている状態が多いです。
リハビリの時間では、強制的に使わされていた麻痺側の身体や、動きづらい部分を、日常的に使っていくというのはとても難しいことです。
人間の脳は、すごい能力を持っているにもかかわらず、サボりぐせがあります。(それ自体がすごい機能なのですが)
できるだけ脳にかかる負荷を少なくして、物事を簡素化していくことがあります。
例えば、初めは麻痺に力が入りづらいことがわからずに立ち上がろうとして失敗します。そのあと麻痺側に力が入らないことがわかって、非麻痺側にたよって立つことができると、わざわざ難しい麻痺側を使うよりも、簡単な方を選択して動作をします。
今度は麻痺側が少し動くようになってくると、立つ時に足が突っ張れるようになるので、そのつっぱりを利用した方が楽。というように、使えるところが増えていくわけですが、ある一定のところで、その成長は安定してしまうので止まってしまいます。
意識(注意)を向ける
成長が止まってしまうことを一度考えてみましょう。
例えば、人それぞれ、文字の上手さは違いますよね。
子供の頃よりは、今の方が文字がうまいとは思いますが、この文字のきれいさは、文字を書いた量によって決まるのでしょうか?
文字は単純に書けば書くほどうまくなるのかと言えば、「NO」です。
歩行も同じです。
ぶんまわし歩行や、膝の過伸展(バックニー)のような異常歩行が出ている場合、
歩く距離や時間を伸ばして運動の量をふやしたり、屋外歩行で外をたくさん歩いたとしても、
歩きを変える意識がないと、今行っている歩き方がさらに上手になります。
つまり、ぶんまわし歩行の方が、ぶんまわし歩行でたくさん歩くと、ぶんまわし歩行のスペシャリストにはなるけど、正常歩行にはなりづらいということがいえます。
同じ動作の繰り返しは、効率を上げるには適していますが、運動の質に変化は起こりません。
では、どうしたらいいかというと、
うまく書けるように意識するのみ。です。
意識するということは、どうしたら、よくなるかを考えるということです。
訓練へ応用する
どこをどう直せばいいのか、どのようになおせばいいのかに気をつけて行わない限り、運動の質に変化はおこりません。
何をできるようにしたいかを明確にして、それを行うためには何が足りないのか、どこが間違っているかを知らないと、意識して変えることもできません。
原始的な運動パターンや、運動単位の動員の異常については、運動を繰り返すことで、その使い方が上手くなったり、その動きに対しては筋力が向上してくるので、できることも増えてはきます。
ただし、代償運動が定着するにつれて、新しい運動の獲得は自分自身だけではどんどん難しくなることが考えられます。
どんなふうになりたいか?
「歩きたい」だけじゃなくて、どんな歩きにしたいか?を考えて、しっかり担当のリハスタッフと相談することをオススメしますよ。
そして、新しい運動の獲得には新しい運動の感触がつきものです。
こんな感じなんだ〜。とか、この感じは初めて!というような経験が、新しい運動を導いて定着してくれますので、今までのなれた感覚だけでなくて、新しい感触を探すことが大切です。
わからないことがあれば、いつでもご相談くださいね!
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。