伸張反射の異常について(続き)
北海道札幌市で脳梗塞・脳出血の脳卒中を専門に自費リハビリをさせていただいております「脳とカラダの研究所」の藤橋亮介です。
オリンピック連休も、あっという間に終わってしまいますね。
本日は、前回の続きで、伸張反射の異常について話をしていきます。
「伸張反射の異常」って何?
と、わからないかたは、こちらのブログを読んでから、読み進めていただけるとありがたいです。
そして、前回は、4つの症状のうち「伸張反射の異常」について、話を進めてきました。
今回はその続きとなります。
そちらもまだ読んでいないという方は、先にこちらを読んでみてくださいね。
伸張反応の意味
そもそも、伸張反射は、筋肉の急な伸びに対して、縮む働きがありますので、身体の関節の急激な変化に対応して、その姿勢を保持するための役割が多いと考えられます。
例えば、急に地面がぐらぐらと揺れたり、床が傾いたりしたときに倒れないように、足首の角度を維持したりして、無意識にでも転倒せずに姿勢を維持できるようになっているのです。
そのため、伸張反射は「速度」にかなり影響を受けます。
地面に足をつけた時に、アキレス腱が伸ばされて、クローヌスが出る場合には
ゆっくりと足を地面につけることで、症状は軽減します。
他の関節も、ゆっくりとした動きでは、伸張反射が制御されるはずです。
伸張反射が強くなるのは なぜ?
説明するのが少し難しいので、イラストを使ってなるべく単純にしてお伝えできればと思います。
脳から送られたの命令は運動神経を伝わって、筋肉を動かします。
しかし、脳梗塞や脳出血など脳卒中になると、脳から神経に命令が伝わりづらい状態となります。
そうなると、神経に命令が伝わりづらいので、体も動かない状態となります。
しかし、脳は損傷していても、運動を伝える神経(オレンジ色の神経)は生きているので、なんとかして命令が欲しいわけです。
脳からの命令がこない分、どこか他からの命令を受け取れるようにしてしまいます。
その命令のもらい先が、筋肉の伸びを感じる神経や感覚の神経(青色の神経)から、命令もらってしまうことで
筋肉の伸びや感覚に対して、過剰に運動がおこってしまう「伸張反射の異常」という症状が現れてしまうと考えることができます。
どうしたらいいのか?
運動の神経には、上の図で示したように、感覚の神経からの命令も受けています。
なぜかというと、そもそもは、健常な人でもこの伸張反射が異常におこらないように、制御する必要があるからです。
つまり、筋肉の動きにびっくりしすぎないように、あらかじめ準備しておくわけです。
この準備が、「予測」です。
その動きをすると、どんな感覚がくるのか?
伸ばされると、筋肉が緩んでいく感じがするか。
足をついた時に、思ったように足の裏がついているのか。
いろいろなところで、人間は常に無意識ですが予測をして運動が起こっています。
この予測こそが、不足の事態に備えて筋肉の緊張や反射をコントロールしてくれる役割として考えられています。
そのため、伸張反射の異常は、抑えたり制御したりコントロールすることができるので、「反射」ではなくて、「反応」です。
そして、正しい感覚や運動を予測できることによって、伸張反応は制御できて、神経は脳からの命令を受け取る準備をすることができます。
動くことももちろん大切ですが、無理矢理な動きすぎによって、この反射を強め過ぎてしまうことは、逆に反射と強める結果にもなってしまう恐れがあります。
そうしないためにも、適切な難易度の調整と、運動のための感覚を養うことがとても重要だと考えられます。
まとめ
このような考えから、脳とカラダの研究所では強い強度の運動をすすめることはしません。
まずは、自分で動くことではなく、相手に動かされることで、動かされたらどうなるか正しく予測できるようにすることを行なってみると、伸張反応が軽くなったり、伸びなかった腕や足が伸びやすくなったりすることをすぐに体験することができます。
このような神経の話は、とても難しいですが、なんとなく理解して、どんな仕組みかを知っていくことは専門家だけでなく、当事者であるみなさまにも知ってもらうことが、リハビリの効果を上げる手助けになると思っています。
また、ご家族や周りのかたの協力と理解も非常に有効です。
まずは、ただ動くだけでなく、どこが動くのかな?どこを触られるのかな?どんな感触がするのかな?予測通りだったのかな?ということを考えるようにしてみることをオススメします。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
難しい内容だったと思うので、わからないことがあれば、コメントやホームページのお問い合わせからお気軽にお尋ねくださいね!