痙性麻痺の種類

北海道札幌市で脳梗塞・脳出血の脳卒中を専門に自費リハビリをさせていただいております「脳とカラダの研究所」の藤橋亮介です。

脳卒中になると多くの方は、損傷した脳と反対側の身体に、運動麻痺や感覚障害が現れる「片麻痺」という状態になります。

運動麻痺の種類には、主に「痙性麻痺」という症状が現れます。

オリンピックの連休中ですが、この間に痙性麻痺について、お話をしていこうと思います。

痙性麻痺とは

実は痙性麻痺という言葉は、痙縮を伴った麻痺というような意味の造語のようなものです。

神経生理学や脳科学など、それぞれの分野で「痙性」や「痙縮」という言葉としては似ていますが少し言葉の意味が違ってくるので、使い方は難しいです。

リハビリにおいては、運動麻痺の症状の強さを、「痙性が高い・低い」などと表現します。

痙性が高いから運動麻痺が強いとして表現することは、相手にどのような状態かをおおざっぱに伝える上では便利ですが、この言葉自体にはあまり意味がありません。

リハビリでは、これに対し症状をさらに深く見極めて対処していく必要があるからです。

痙性麻痺の種類

脳とカラダの研究所では、痙性麻痺を4つの症状として分けて考えて対処します。

この分け方は、認知神経リハビリテーションの考え方に準じています。

①伸張反応の異常

筋肉が伸びる(関節の動きや、体に刺激が加わる)ことによって、筋肉が過剰に縮んでしまう状態。

足の裏を地面につけた時に、踵がピクッと浮いてしまったり、ガクガク(クローヌス)なったりします。

また、筋肉をポンッと叩くと、ピクッと縮む反応がありますが、この現象は健康な状態でも起こります。痙性麻痺の場合はこの反射が普通よりも強くなっていることを示しています。

②異常な放散反応

体を動かそうとした時に、他の部位も意図せず動いてしまうこと。

立ち上がる際に手にも力が入ってしまったり、肘だけを動かそうとしても肩も上がってしまったりします。

動かそうとして部分以外も勝手に動いてしまったり、力が他のところに入りすぎたりしてしまうことです。

この反応も、重たいものを持つと歯を食いしばったり、慣れない動きをしようとすると手先まで動いてしまったたりと、健康な状態でも起こるものですが、痙性麻痺の場合には、気をつけてもこれを制御することが難しいです。

③原始的な運動パターン

単純な動きや決められた動きのパターンでしか、体を動かせない。

縮むか伸ばすか、上げるか下げるか、開くか閉じるかなどの、一定の動きしかできない状態のことです。

ここの動きをとめて、ここだけ動かしたい。や、目の前にあるコップをまっすぐ手を伸ばせばいいのに、一度手を持ち上げて大きく外側からしか持ってこれない。歩く時にも、足を外側にぶん回しながら歩いてしまう。など、一応自分の意思で体を動かすことはできるけど、大雑把な動きしかできないことです。

④運動単位の動員の異常

ある程度、分離運動ができるけれど、うまく力のコントロールができない状態です。

原始的な運動パターンと違い、足首だけを動かしたり、肘だけを曲げ伸ばししたり、意識することで、各関節をある程度動かせているけれども、力の入れ具合や抜き具合がうまく調整できない状態です。

スプーンは使えるけれど箸は難しかったり、家の中は一人で歩けるけれど外は杖がないと歩けないことや、歩けるけどまだうまく歩けていない。など

まとめ

基本的には、①〜④になるにつれて、痙性麻痺は軽くなったと表現できますし、

④の状態だけれど、①や②の要素もまだすこし残っているということもあります。

完全に分類できるわけでなく、いま困っている動きには、どのレベルで動きの制限となっているかを考えていくことが大切です。

そして、とても重要なことは、

それぞれのレベルに応じて、行なっていく訓練が異なります!

症状を分けることによって、脳や神経のレベルを判断して、訓練を設定することが可能となるのです!

単純に、動きを反復しているだけでは、筋力はついても新しい動きを獲得することは難しいことが多いと考えられています。

だからこそ、脳や神経のレベルに合わせて、訓練を組み立てていく必要があります。

次回は、それぞれのレベルに合わせた、訓練の方法についてお話しさせていただきたいと思います。

最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。

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