注意機能と抽象度
北海道札幌市で脳卒中専門に自費リハビリをさせていただいております「脳とカラダの研究所」の藤橋亮介です。
みなさんは何かをしようと動く時に、足だとか腰だとか、手が曲がらないようにとか、たくさんのことに注意を向けすぎて、「そんないっぺんにできない!!」 となっている方が多いのではないかと思います。
セラピストも次々と新しいところが気になってリハビリをするうちに、患者様にたくさんのことに気を付けてもらわなければならなくなっていることも多いと思います。
ですが、人間が注意を向けられるものは基本的に1つだけなのです。
本日は、そのような疑問に対し、解決方法を考えてみたいと思います。
では、まず次の図は何に見えますか?
この絵は「ルビンの壺」という絵ですが、見方によって2通りの見方ができます。
① 黒いところを見ると、壺に見えます。
② 白いところを見ると、人が2人向かい合っているように見えます。
大切なのは、どちらの方もそれぞれは見ることができますが、同時に見る(認識する)ことができないということです。
これがゲシュタルトという作用です。
ゲシュタルトとは、ひとかたまりというような意味があって、ひらがなの「あ」ように一本一本の線には意味がないけれど、その線が組み合わさることによって意味を見出せるものです。
そして、人はこのゲシュタルトをひとつしか認識できないということです。
そのため、体の動きの場合も基本的に、複数の場所に同じ程度の注意を向けてうまくコントロールするということはできません。
そのために、必要なのが抽象度です。
抽象度というのは、視野を広くしたり、高いところから見下ろすイメージです。
例えば、猫がいます。この猫が三毛猫のオスで、藤橋が飼っていて、赤い首輪をしていて…となると、どんどん詳しくなっていって、抽象度は下がります。
猫科の動物で、4本足で歩行して、哺乳類で、生物で…と広い意味になっていくと、どんどん抽象度が上がってくこととなります。
つまり抽象度を上げると、見えてくる範囲が増えますが、細かいところは見えにくくなります。
このような考えを動作に応用することができます。
動作のレベルでは、抽象度の低い方から
どこが動いているか? どのように動いているか? どんな感触がするか? から
うまく立てそうな気がするか? スムーズに足が出そうな感じがするか? などに質問を変えたり、
砂の上を歩いたとしたら、足跡がきれいについているか? うまく足跡をつけるにはどうしたらいいか?
この手の構え(腕全体の構え)では、どんなことをするときに使えそうですか? などの質問にすることで、
知ることのできる範囲が広がりやすくなりますし、細かい部分が実際の生活のどの部分に役立つかわかってもらいやすくなります!
イメージとしては、スポットライトがあって照らす際を思い描いていただいて
スポットライトの数は一つだけ。
そのライトの範囲を絞るか、広げるかの方法を変えるイメージです。
質問するということは、相手の話す選択肢をせばめてしまうので、どんな質問であれば、気を付けて注意してもらいたい範囲を含んで、認識できるのかを判断することはとても大切だと思われます。