脳の機能停止状態

脳梗塞や脳出血などの脳に損傷が生じると、どのような状態になるかご存知でしょうか?

脳梗塞は、脳の中にある血管がつまることによって、その奥にある脳の部位に血流がいかなくなります。そのため、脳細胞が栄養不足なることで細胞が死んでしまいます。
脳出血は、血管が切れることによって出血し、その先の細胞が死んでしまうことや、出血自体が周辺の脳組織を圧迫することによって、脳の機能がうまく働かなくなってしまいます。

原因は違うにしろ、脳にとって細胞がダメージを負ってしまうことになります。
その際に、脳はこれ以上損傷を広げないために一旦、脳の機能を停止させる防御反応があります。
この機能のことを「機能解離(diaschisis)」といいます。

リハビリテーションに関わる医療従事者であれば、一般的となっていますが、医療について詳しくない当事者の方や、そのご家族にはまだ馴染みのない言葉だと思われます。

イメージがしやすいように、ビルの火災を思い浮かべてみてください。

ビルを脳だと思ってください。
ビルの一室で、火災(脳梗塞や脳出血などの損傷)が起こると、どうなるでしょう?

火災報知器が鳴り、スプリンクラーが作動します。そして、防火扉が閉まり火をとどめようとします。
火災報知器は、身体に危険なことが起こっていることを、頭痛がしたり、体がだるくなったりして知らせてくれます。
スプリンクラーは、炎症を抑えようとする生理学的な作用です。そして組織を修復しようと働きます。
そして、防火扉が「機能解離」としての役目として働くイメージです。

防火扉は、隣の部屋との連絡を遮断します。そのため、お隣の部屋だけでなく、火事の起きた部屋から遠い部屋まで、その通路を遮断してしまうのです。
そのため、脳損傷が起こるとはじめのうちは、損傷部位と関係のない脳の機能まで、傷害されたような症状が起こるとされています。
そして、火事が終息して、徐々にその防火扉が再び開かれ始めると、いわゆる自然回復のレベルで少しずつ脳の機能が回復されていきます。

しかし、問題なのは、この防火扉が火事の終息後も一向に開いてくれない場合があります。
そうなると、症状が長引いたり、本来できるはずのことができないままになってしまうことがあります。

セラピストは、その状態に気づいてあげられたり、そこを考慮してリハビリを進めていく重要性があります。

次回は、防火扉を硬く閉ざしてしまう理由や、その扉を開いていく方法をおはなししていきます。

おたのしみに!

情報

前の記事

うまく食事を取るコツ
情報

次の記事

機能解離の長期化